S T O R Y

茶の湯とは、古から日本の生活の中に深く根ざし、多くの芸術をも包括しながら移り行く世相を超え、幾度かのアバンチュールを繰り返し歴史が辿ってきたカルチャーの集積。そして、いつだってイマを語る。

日が暮れて、街を濡らす灯が色気と怪しさを引き出すトーキョーの夜。都会の喧騒を抜け、その扉を開くと地下に降りる階段が続く。 この「にじり口」のごとく階段を降りていくと、地下には、あらゆる感性が交わるクロスオーバーな異空間が広がっている。

ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏に彩られながら、漆黒の闇の中で艶やかに点てられるお茶。

トランペットのメロウなメロディに包まれ、煉切りの芸術的な技によって咲き乱れていく和菓子たち。

箏の弦と剪定のハサミの音が、ミニマルな宇宙のリズムを刻む中、たおやかに自然と調和されていく盆栽の「仕立て」。

MCが紡ぎ出すリリックを心地よいフロウに乗せて、書家が凛々しく筆を走らせ宿す言霊。

絵馬絵師によって描かれていく能面の様子が時空を超えた美しき花魁の舞とともに、妖艶にきよらかに放たれていく模様。

覚悟の筆に覚悟の旋律が大きくうねりあう中、繊細かつ迫力ある墨で蘇える武人たち。

ボンバスタイルで次々に繰り広げられるビートに、ストリートのサムライたちがアクロバティックなダンスでフロアをスウィングしていく。

それぞれのアーティスト、ミュージシャンとの技と技とが、お互いの所作や眼差しを感じながら、即興で、ど真ん中でグルーヴし、唯一無二の「美」を奏で、 最高のエンターティメントに昇華されていく。

僕らはそのストイックな緊張感と圧倒的な美しさに、夢中に心を奪われ撃ち抜かれていく。

主と客が互いの感性を試しあい、そのスリルから生まれる、主客一体の絶対的空間。いつだって「茶会」というパーティーの醍醐味はそこにある。

そして僕らは、会場には収まりきらない色気に酔いしれながら、日本酒片手にあますことなく「客っぷり」を、存分に楽しむ。