FEATURE

#011 人生のすべてはアート。
芸術家

Bruno Dumont

2018/05/18

岡山県にある美咲町で、2年に渡り開催された「美咲芸術世界」。自然は豊かだが人口の少ないこの地域を彩るため、世界各国の芸術家が集結し、各々が町の廃材で作品を作るというアートプロジェクトだ。町を訪れる人たちは、アート作品をただ鑑賞するだけではなく、芸術家たちが創作に取り組む様を間近で観ることができ、彼らと談笑をすることもできる。そんなライブ感溢れるイベントは好評を博し、普段は人通りの少ない田舎道で渋滞が起きるほど県内・県外からお客さんが押し寄せた。芸術作品と言うと、感心がない人にとっては、“前知識がないと楽しめないもの”というイメージがある。でも、実際に製作している現場を観られるのであれば話は別。誰だって、人が楽しんでモノづくりをしている姿には心を動かされるものだから。
 
 プロジェクトの発起人に話を聞いたところ、この活動のルーツはパリにあるのだという。欧米諸国には、「スクワット」という文化があり、飽き物件を不法占拠し、アート活動を行う集団も数多くいる。その中でも伝説的なのがパリに現存する「59Rivoli」。このスクワットこそが、まさに「美咲芸術世界」の起源。そこには、7階建てのアパートの一部屋ごとにアーティストのアトリエがあり、誰でも入って創作活動を見たり、気に入った芸術作品を購入することができる。創設者の一人が、「美咲芸術世界」の会場にいた。小高い丘の上で、黙々と廃材の小屋を作り続けていたブルノさんだ。氏は、便利になる反面で弊害を生み続ける世の中に対して、訴えかけるような活動を世界中で続けている芸術家。そのレックレスな生き様と合わせて、日本にはない「スクワット」という文化について話を聞きました。
 

Photography&Interview:K-suke Matsuda

 
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<Profile>
1965年生まれ。フランス・モントルイユ出身。パリ在住。スクワット「59Rivoli」創設者の一人。メッセンジャーを経て、21歳の時に画家を志す。現在は自らを「Cabanisit(小屋主義者)」と名乗り、世界各地でエコハウスを作るアート活動に取り組む。代表作に、“水を使わないトイレ”をテーマにしたアートプロジェクト「トイレット セッシュ」など。
 
たどり着いたのは、小屋作り。
 
子供の頃は、アーティストという言葉がどんなものを指すのかはわからなかったけど、絵は5歳の頃から描きはじめていた。まるで恋をしている時のようなドキドキ感を味わえるのが好きでね。デッサンからスタートして、中学生の時にコラージュにも興味を持った。21歳の時に画家として生きることにしたんだけど、その前はメッセンジャーをやっていたよ。「ツール・ド・フランス」に選手として出たりしていたんだけど、怪我をしてドクターストップを出されてしまって。それからは、絵で生きるという方向に舵を切った。
 
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僕は、風来坊みたいなもんだよ。お金を稼ぐための仕事が好きじゃないんだ。だって、身体が痛くなったり、口論になったり、トラブルが発生したり……。画家になる前に少し働いたりもしたけど、生活のために仕事をするというスタンスに大きな問題があると思う。だから、僕はアーティストになって絵を描いた。絵は僕にとっての言葉であり、絵を通じて会話ができると思っていたんだけど、それだけじゃ足りなかった。今、僕が思っていることをどうやって伝えたら良いかと考えた時に、小屋を作るのが良いと思ったんだ。廃材で作れば、お金もほとんどかからないし、自然のエナジーをすべて取り入れられる。たとえば、太陽熱で発電もできる。トイレもボットン式にして、おがくずを入れれば匂いもしないし、溜まってきたら肥料にして畑に巻けば野菜も作れる。それを食べることで僕は生きられる。そんな循環のサイクルに興味があって、40歳からは小屋作りに没頭しているんだ。アーティストには国境がないので、これからもいろいろな国で小屋を作りたいと思っているよ。今よりもさらにコンパクトに、さらに快適にできる気がするんだ。
 
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